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このコラムの内容
・報告が義務化される背景
・関連する法令や情報源
・財務諸表の報告概要
・財務諸表の具体的な報告内容
・財務諸表の報告まとめ
介護事業所の財務状況報告が義務化される背景
社会福祉法人や障害福祉サービス事業所が財務状況を公表することとされていることを踏まえて、介護サービス事業所についても、2024年度から介護事業所に対して財務状況の報告が義務化されます。
この背景には、介護サービスを提供する事業所に対し、経営情報の公開を通じて業界全体の信頼性を高めるという狙いがあり、利用者やその家族が介護サービス事業所を選ぶ際の重要な判断材料を提供するという目的があります。
関連する法令や情報源
この制度は、介護保険法およびその施行規則の改正(介護保険法第115条の35)に基づいて規定され、「介護サービス情報公表システム」を改修したシステムを通じて、都道府県知事へ報告が行われます。
財務状況等の報告概要
2024年4月から施行されるこの制度では、介護事業所は「介護サービス情報公表システム」を改修したシステム「財務状況見える化システム (仮称)」を使用して、財務諸表を都道府県知事へ報告することになります。
この改修したシステムでは、介護事業所が財務諸表をインターネット上で入力して、都道府県へ報告されます。
介護事業所は会計年度ごとに、財務諸表の情報を入力する義務があり、報告する期限は会計年度終了後の3カ月以内になります。(義務化する初年度のみ、2024年度内での報告が認められる措置あり)
また報告された情報から、都道府県は介護事業所の経営情報に関する調査及び分析を行い、さらに厚生労働大臣に報告して、介護サービス事業所の経営情報に関するデータベースを整備して、属性等に応じてグルーピングした分析結果として公表される設計となります。
財務状況等の具体的な報告内容
具体的な内容は今後あらためて発表されていきますが、現時点で都道府県の資料にも、主な報告内容は次のようになっています。
具体的な報告内容の財務諸表(義務)
- 事業所の基本情報(名称、所在地、運営体制)
- 収益および費用の内訳(損益計算書)
- 資金収支計算書(キャッシュフロー計算書)
- 貸借対照表(バランスシート)
具体的な報告内容の財務諸表(任意)
- 職種別の給与情報およびその人数(設置主体や給与体系、個人が特定されることがないよう配慮)
公表される事業所や施設の単位
公表にあたっては、原則として介護サービス事業所又は施設単位となります。ただし、拠点や法人単位で会計としており、事業所又は施設単位での区分けが困難な事業所においては、拠点単位や法人単位での公表を可能となります。(公表対象が明確となるよう、会計に含まれている事業所又は施設を明記する)
この辺りは社会福祉法人やグループ法人の会計単位や、同一拠点内に複数の事業所を運営する複合施設の会計負担に配慮されたものになります。
報告対象外となる例外ケース
下記のいずれかに該当する介護事業所は、報告対象外となります。
- 過去1年間で提供を行った介護サービスの対価として支払いを受けた金額が100万円以下のもの
- 災害その他都道府県知事に対し報告を行うことができないことにつき正当な理由があるもの
これらは「介護サービス情報公表システム」の対象や、近年の災害被害など事業所へ配慮したものになります。
2024年度からの財務諸表の報告まとめ
介護事業所にとってこれらの財務諸表の報告は、新たな会計制度の業務になりますが、事前に報告する内容や方法など、早めの準備をとっておくことが大切です。
それぞれの事業所や拠点・施設ごとに財務諸表の整理、システムへの入力方法の確認、必要書類の整備など、報告に必要な体制を整えることが求められます。
この会計制度が広まっていくことにより、介護業界の経営面の透明性が向上し、利用者や家族からの信頼性の担保が期待されます。
また報告に関する詳細は、厚生労働省や都道府県から随時発表されるため、常に最新情報をチェックすることも重要です。
(厚生労働省からは「財務状況見える化システム (仮称)」について、2024年度下期にあらためて発表される予定です)
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■出典(参考URLなど)
厚生労働省:社会保障審議会 介護保険部会
厚生労働省:全国介護保険担当課長会議資料