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厚生労働省 介護情報基盤の仕組み
2024年9月19日(木)に開催された第114回 社会保障審議会 介護保険部会において、利用者の介護情報等のデータベースとなる介護情報基盤の仕組みが発表されました。
この介護情報基盤は、厚生労働省「データヘルス改革推進本部」および「経済財政運営と改革の基本方針2022」に沿ったもので、今後は介護と医療に渡る全般的な情報を共有・交換できる、次世代プラットフォームを見据えたものになります。
自治体/利用者/介護事業者/医療機関などが、利用者の介護情報等を電子的に閲覧できる情報基盤を整備することにより、多様な主体が協働して高齢者を地域で支えていく地域包括ケアシステムの推進にも繋がる効果が期待されます。
今回の社会保障審議会審議会(第114回)で発表された介護情報基盤の仕組みについて、具体的な情報の流れやデータ連携、活用イメージなど、最新情報チェックしていきましょう。
このコラムの内容
・前回の部会における意見
・介護情報基盤の概要(背景、目的、活用イメージ)
・介護情報基盤の内容(共有する情報と関係者)
・介護情報基盤でできること
・介護情報基盤を扱う通信方式
・介護事業所等への支援
・今後のスケジュール(候補)
前回の部会における意見
前回の審議会(第113回)より、介護情報基盤の導入に向けて、審議会の委員や関係者などさまざまな見方や意見が交わされました。
介護情報基盤の整備によって得られる効果である「業務の効率化」と「サービスの質の向上」という観点から、このプラットフォーム導入に前向きに取り組むことが期待されています。
そのために必要な情報(共有すべき情報)の選定、およびその情報の活用について、利用者はもとより各主体や関係者に、その目的・効果も含めて十分な理解を得られるよう、より分かりやすく整理して、現場目線での説明を行ってほしいニーズも挙がっています。
介護情報基盤の概要(背景、目的、活用イメージ)
背景
今後2025 年より更に先の状況を見通すと、2040 年頃に向けて、団塊ジュニア世代が65 歳以上となって高齢者人口がピークを迎え、要介護認定率が高く医療・介護ニーズが多い85歳以上人口が増加するなど、介護サービスの需要が増大・多様化することが見込まれます。
また2040 年頃に向けては、既に減少に転じている生産年齢人口が急減して、介護を含む各分野における人材不足が更に大きな課題となることが見込まれます。
このような状況の中では、限りある資源を有効に活用しながら、質の高い効率的な介護サービス提供体制を確保する必要があり、介護事業所や自治体におけるICT等を活用した業務の効率化が急務となっています。
目的
この介護情報基盤を整備することで、利用者、市町村、介護事業所、医療機関といった関係者が利用者に関する介護情報を共有・活用でき、これまで紙を使ってアナログにやりとりしていた情報を電子で共有できるようになり、業務の効率化(職員の負担軽減、情報共有の迅速化)を実現できる。
さらに今後、介護情報基盤に蓄積された情報を活用することにより、事業所間及び多職種間の連携の強化、本人の状態に合った適切なケアの提供など、介護サービスの質の向上に繋がることも期待される。
活用イメージ
介護情報基盤の内容(共有する情報と関係者)
この情報基盤で取り扱う情報としては、「利用者の要介護認定情報」、「介護保険の請求・給付情報」、「LIFE情報(科学的介護情報システム)」、「ケアプラン」、「住宅改修や福祉用具の利用等情報」が挙がっており、その様式(フォーマット)を含めた内容が引き続き検討されます。
またこの情報基盤にアクセスして、情報を作成する/共有する主体は、現時点で次のように想定されており、今後の実務レベルに向けて、どの情報をどの関係者まで共有するかが議論されています。
※利用者の同意を前提に、介護情報基盤で情報共有されるものも含む
介護情報基盤でできること
介護情報基盤では、利用者の介護情報等について、前述のような種類・内容・関係者でデータ活用されるため、利用者にとって最適なケアを計画・実行する「サービスの質の向上」につながり、電子化された情報を扱うことで関係者間での「業務の効率化」も可能となります。
今回の社会保障審議会審議会(第114回)で挙げられた、具体的なデータ活用ケースを見ていきましょう。
※利用者はマイナンバーカードやマイナポータルの利用が前提となる
※介護情報基盤の構築にあたっては、デジタル庁が推進するPMH(Public Medical Hub)を活用して、自治体/利用者/介護事業所/医療機関と情報を連携することを想定する
参考:デジタル庁「自治体・医療機関等をつなぐ情報連携システムPMH(Public Medical Hub)」
活用ケース1 要介護認定事務の電子化
活用ケース2 介護保険被保険者証の電子化
活用ケース3 LIFE情報、ケアプラン、住宅改修・福祉用具の利用等情報の電子化
(ここでは医療機関より、健康診断結果の情報が活用される記載もあり)
介護情報基盤を扱う通信方式
介護情報基盤の利用にあたっては、インターネット通信(オープンなネットワーク)がベースとなっている介護事業所の通信環境を考慮して、既存の医療情報システムの取扱い等を示した「医療情報システムの安全管理ガイドライン」に基づくセキュリティ対策を講じられている。
そして介護情報基盤との連携については、このガイドラインの「オープンなネットワーク」を使用する場合の安全管理措置に基づいて、次のように「インターネット接続TLS1.3以上」と「クライアント証明書」を組み合わせた通信方式を想定されている。
参考:厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン6.0版」
※介護情報基盤を利用するためには、医療情報システムの安全管理ガイドラインに準拠したセキュリティ対応に加え、利用する端末への、電子請求を利用する場合と同様のクライアント証明書(国保中央会で発行)、カードリーダーを利用してマイナンバーカードを読み取るためのドライバ、本人認証に利用するアプリケーションのインストール、TLS1.3に対応するための端末設定等が必要。
介護事業所等への支援
介護情報基盤を導入するあたり、利用する介護事業所や医療機関に対して、行政サイドから適切な支援が検討されています。
具体的には、利用者のマイナンバーカードを読み取るカードリーダーやドライバ、セキュリティ対策ソフトや本人認証に利用するアプリケーション、インターネット接続TLS1.3に対応するPC端末設定などが必要になります。
また介護情報基盤を利用する介護事業所や医療機関においても、クライアント証明書や本人認証を不正に利用されないよう、管理者や職員に定期的に情報セキュリティに関する研修を実施し、情報漏洩を防止する取り組みが必要になります。
これらのハード/ソフト面での導入支援については、どのような予算(補助金など)から必要な支援を行っていくか、今後も引き続き検討されていきます。
今後のスケジュール(候補)
介護情報基盤の運用を開始する時期にあたっては、令和7年度末までにシステム移行して、令和8年4月1日から稼働するスケジュールが候補に示されています。
参考:「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」(令和5年5月19日公布)により、施行期日は公布後4年以内の政令で定める日
ただし自治体においては、別途の「地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化」の取組や調査にあるように、施行期日までに標準化された基幹業務システムへの移行や環境整備へ困難なケースも挙がっています。
参考:デジタル庁「移行困難システムの把握に関する調査」(令和5年10月時点)
今回の介護情報基盤の整備に向けたアンケート調査においても、令和7年度末までの移行が困難と回答した自治体は半数を超えて、人口規模が大きい自治体(政令指定都市・特別区・中核市)で移行困難と回答する割合が高くなっています。
参考:厚生労働省「介護情報基盤の整備に向けた自治体向けアンケート調査」(令和6年7~8月時点)
介護情報基盤の整備に向けた実務レベルの内容やセキュリティ、その導入支援や開始時期については、審議会の委員や関係者を含めて多くの意見が挙がり、引き続き議論されています。
介護情報基盤や全国医療情報プラットフォームに関する詳細は、次回の社会保障審議会 介護保険部会においても、発表される予定です。
■出典(参考URLなど)
厚生労働省「第114回 社会保障審議会 介護保険部会」
厚生労働省「データヘルス改革推進本部」
政府「経済財政運営と改革の基本方針2022」
デジタル庁「自治体・医療機関等をつなぐ情報連携システムPMH(Public Medical Hub)」
厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン6.0版」
厚生労働省「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」