介護事業所の電子申請の導入状況_全国・最新版
~厚生労働省の最新調査より、電子申請の現状をレポート~
電子申請の利用開始時期の意向調査
厚生労働省による「介護事業所の電子申請・届出システム」の案内ページに、「自治体に向けた利用開始時期の意向調査」の最新結果が発表されました。(令和6年6月)
この調査は、厚生労働省から自治体に向けて、「電子申請・届出システム」への制度改正に合わせて聴取するもので、全国の都道府県から区市町村までの自治体を対象に、全数調査するものになります。また内容は、各自治体での「電子申請・届出システム」の利用開始について、どの時期になるか意向を聴取したものになります。
そこでこの介護業界のDXレポート『デジレポ』vol.2では、この制度改正のちょうど中間時点にあたる今期:第4期(令和6年度上半期)において、「電子申請・届出システム」が全国の自治体にどの程度利用されて広まっていくか、最新版レポートとして紹介します。(厚生労働省の調査結果に踏まえて、当社がヒアリング、リサーチした考察も含む)
厚生労働省「自治体に向けた利用開始時期の意向調査」 調査概要
・対象:全国の自治体:「都道府県」「指定都市」「特別区」「中核市」「市*」「町村*」(調査対象の全国1,788団体)(*)一部の市町村には事務組合などを含む
・内容:各自治体での「電子申請・届出システム」の利用開始時期について意向を聴取(第1期~第7期に分けて聴取)
・時期:2024年6月6日時点
・出典:厚生労働省ホームページより引用・編集
》》》調査結果は、厚生労働省の案内ページでも掲載されています。
行政区分では都市部の自治体が先行して、地方部の市町村が遅れる
〔行政区分ごとの導入状況〕
各自治体での「電子申請・届出システム」の利用開始時期について、時系列で見ていくために、時期ごとの積み上げ回答割合を見ると、先行する「都道府県」が高いものの、都市部と地方部で差が分かれる結果となりました。
今期の第4期(令和6年度上半期)を見ると、「特別区」「指定都市」「中核市」が6割近くに上る一方で、「市」「町村」は4割を下回る状況になります。
当社がいくつかの区市町村にヒアリングしたものでも、今回の電子申請は複雑な工程になっており、関連する条例改正やシステム対応の準備など、慎重になっている様子も見られました。そのため都市部であれば専門部署や担当者の配置で電子化に早く着手できるものの、地方部では介護保険を担当する職員数やリソースを限られて、新たな制度改正に対応しづらい傾向と言えます。
都道府県別では「沖縄県」「福岡県」が突出して高く、「大阪府」「岡山県」が低く留まる
〔都道府県ごとの導入状況〕
続いて今回の調査結果を都道府県ごとに見ると、次のような表になります。(電子申請の利用開始時期の回答積み上げを集計して、今期の第4期:令和6年度上半期の割合でソートしたもの)
現在の利用開始の積み上げ割合を見ると、上位は「沖縄県」「福岡県」の7割を超えて電子申請が広まっている一方で、「大阪府」「岡山県」は1割を下回る状況になります。
-「沖縄県」の自治体では、厚生労働省の手引きに沿って、令和6年度上半期より電子申請の案内が開始
さきほどの行政区分ごとのグラフでは、都市部の自治体が高い傾向にありましたが、「大阪府」の電子申請が2.3%(1団体のみ)に留まるというのは、これの傾向に反して意外な結果となりました。
「大阪府」では独自システムやプロセスによって、事業所からの申請を審査
〔大阪府の各自治体の導入状況〕
阪神圏の経済の中心である大阪には、政令都市や中核市が多く、ケアを必要とする高齢者や介護サービスを提供する事業所も多く集まる地域になります。
そして大阪府の政令都市や中核市にフォーカスして、各自治体での指定申請や受理(審査)の状況をリサーチしていくと、既に独自のシステムやプロセスを運用しているため、新たな電子申請システムへの移行に調整している様子が見られました。
また大阪地域では介護保険サービスの適正化のために、ケアプランやサービス提供を細かくチェックして、介護事業所への行政調査や監査・指導などの実績が挙がっている事例もあります。
-事例)住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の「囲い込みモデル」への行政指導など
特定地域での電子申請への切り替えの状況(推察)
〔今期から来期は電子申請の過度期〕
新たな「電子申請・届出システム」は、全国で共通した様式やシステムを採用したもので、どの地域でも汎用的に運用でき、各種の行政ネットワークと連携したDX化が可能となります。そのため元より標準的な様式や申請・審査方法で運用していた自治体にとっては、比較的スムーズに移行しやすいものと言えます。
-「沖縄県」の自治体では、厚生労働省の手引きに沿って、令和6年度上半期より電子申請の案内が開始
その一方で、独自の申請システムや受理(審査)のプロセスで運用している自治体にとっては、既存システムやプロセスに関わる業務全般を見直しして、新たなものへの切り替えに時間と手間がかかり、これから介護事業所への案内も必要となってきます。
-「大阪府」の自治体では、電子申請に関連するWEBサイトや情報の掲載を準備中
そしてこれらの切り替えの過度期になるのが、現在の第4期(令和6年度上半期)から第5期(令和6年度下半期)にあたり、全国の自治体でもその対応や傾向が分かれてくる状況になりました。