今回調査では、訪問系サービスや介護テクノロジーにフォーカス
出典:厚生労働省「介護事業経営概況調査」より引用・編集
厚生労働省は、第244回社会保障審議会 介護給付費分科会および第40回社会保障審議会 介護給付費分科会 介護事業経営調査委員会にて令和7年度の「介護事業経営概況調査」の実施について、調査案の資料を発表しました。
介護事業所の経営状況については、「介護事業経営概況調査」と「介護事業経営実態調査」を組み合わせて、概況と実態の両面から調査するものになり、今回は3年ごとに実施されている経営概況調査を、5月から実施して12月ごろに結果報告する運びになります。
介護事業所の経営情報の報告が義務化されたことに合わせて、近年の介護事業所を取り巻く様々な経営環境の変化に対応する状況や的確な支援策の検討を行うため、今回の経営概況調査の調査案においても、調査内容の追加や省略が検討されています。
》介護事業経営概況調査のフォーカスポイント
今回調査では、訪問系介護サービスで高齢者施設への訪問状況や移動手段や時間を把握するもの、介護ロボットやICT等の介護テクノロジーの導入状況を把握するものが、追加されることから、これらの介護現場における業務の効率化を注視していくものになります。
このコラムでは、2月13日に開催された第244回社会保障審議会 介護給付費分科会の会議資料より、今回実施される「介護事業経営概況調査」の調査案について、お伝えします。【随時更新の予定です】
このコラムの内容
令和7年度「介護事業経営概況調査」の調査案
1 調査の目的
2 調査時期及び公表時期
3 調査対象等
4 調査の基本方針
5 具体的な調査項目
令和7年度介護事業経営概況調査の実施について(案)
1 調査の目的
各サービス施設・事業所の経営状況を把握し、次期介護保険制度の改正及び介護報酬の改定に必要な基礎資料を得ることを目的とする。
2 調査時期及び公表時期
(1)調査時期:令和7年5月(令和5年度及び令和6年度の決算額を調査)
(2)公表時期:社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会における結果の公表は、令和7年12月頃を予定。その後、介護給付費分科会に報告。
3 調査対象等
(1)調査対象:全ての介護保険サービス
(2)抽出方法:層化無作為抽出法により抽出(層別サンプリング)
(3)抽出率:別表参照
(4)調査項目:サービス提供の状況、居室・設備等の状況、職員配置や職員給与の状況、収入の状況、支出の状況 等
調査対象のサンプリング(抽出率)
上記のように、調査対象はすべての介護保険サービスの施設・事業所になり、サービス種別ごとに分けた層別に、無作為抽出(サンプリング)されることになる。
その抽出率は別紙のようになるが、事業所数が4000を超える大きな母集団のサービス種別については抽出率が1/4~1/25ほどになるが、事業者数が1500を下回る小さな母集団のサービス種別については、抽出率が1/1(全数調査)になる。
今回調査は「訪問介護」の抽出率を1/20に引き上げることによって、より多くの調査対象サンプルを集める意図とされている。(前回までの介護事業経営概況調査では、抽出率が1/25)
出典:厚生労働省「社会保障審議会 介護給付費分科会」より引用・編集
4 調査の基本方針
調査の基本方針(抜粋)
(1)調査票について
調査票については、各サービスの収入及び支出等のデータについて、引き続き漏れなく取得する必要があることから、令和5年度介護事業経営実態調査(以下「実態調査」という。)の調査項目を基本としつつ、必要な見直しを行う。
○ 訪問系サービスにおける訪問状況に関する項目
訪問系サービスについて、訪問先の状況、訪問に係る移動手段及び移動時間を把握するための調査項目を追加する。
○ 介護テクノロジーの導入状況に関する項目
介護ロボットやICT等の介護テクノロジーについて、その導入状況を把握するための調査項目を追加するとともに、保守・点検等のランニングコストとして金額を記載する欄を追加する。
○ 特別損益に関する項目
令和5年度実態調査において特別利益の実態を把握する観点から、追加・処理した「本部会計からの繰入額」について、令和7年度概況調査においても、これらの内容を反映する。
(2)回収率及び有効回答率の確保策(詳細は調査案に記載)
① 既存情報の活用
② 建物の状況や面積等のプレプリント対応
③ オンライン調査の促進
④ 一括送付の仕組み
⑤ 調査項目の簡素化
⑥ その他
5 具体的な調査項目
第244回社会保障審議会 介護給付費分科会では、具体的な調査票(案)として、介護サービス種別ごとに、以下の5つの調査票が示されています。
調査票(案)
【資料1-1】令和7年度介護事業経営概況調査 調査票 介護老人福祉施設票(案)
【資料1-2】令和7年度介護事業経営概況調査 調査票 介護老人保健施設票(案)
【資料1-3】令和7年度介護事業経営概況調査 調査票 介護医療院票(案)
【資料1-4】令和7年度介護事業経営概況調査 調査票 居宅・地域密着型サービス事業所(福祉関係)票(案)
【資料1-5】令和7年度介護事業経営概況調査 調査票 居宅・地域密着型サービス事業所(医療関係)票(案)
》》それぞれ詳しくは、分科会の発表資料をご覧ください。
今回調査でフォーカスされる部分をピックアップ
このコラムでは今回調査でフォーカスされる部分について、居宅・地域密着型サービス事業所(福祉関係)票より、「訪問介護」を代表例にピックアップしてみましょう。
出典:厚生労働省「社会保障審議会 介護給付費分科会」より引用・編集
○ 訪問系サービスにおける訪問状況に関する項目
訪問系サービスについて、訪問先の状況、訪問に係る移動手段及び移動時間を把握するための調査項目が追加されました。
・延べ訪問回数にサービス付高齢者向け住宅、養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホームの占める割合
・訪問する職員の主な訪問(移動)手段
・1回(件)の訪問にかかった平均的な移動時間出典:厚生労働省「社会保障審議会 介護給付費分科会」より引用・編集
○ 介護テクノロジーの導入状況に関する項目
介護ロボットやICT等の介護テクノロジーについて、その導入状況を把握するための調査項目を追加するとともに、保守・点検等のランニングコストとして金額を記載する欄を追加されました。
・介護テクノロジー(介護ロボットやICT等)の導入状況
・介護テクノロジーの保守・点検等に係る費用
出典:厚生労働省「社会保障審議会 介護給付費分科会」より引用・編集
○ 特別損益に関する項目
令和5年度実態調査において特別利益の実態を把握する観点から、追加・処理した「本部会計からの繰入額」について、令和7年度概況調査においても、これらの内容を反映されました。
・本部会計からの繰入額
出典:厚生労働省「社会保障審議会 介護給付費分科会」より引用・編集
〇調査内容が省略される項目(記入者負担軽減のため見直す)
・新型コロナウイルス感染症の影響に関する項目
・資金借入金元金償還金支出に関する項目
「介護事業経営概況調査」調査案のまとめ
ここまでが2月に開催された第244回社会保障審議会 介護給付費分科会より、令和7年度に実施される「介護事業経営概況調査」の調査(案)になります。
これらの調査概要や内容はさらに精査されて、厚生労働省での調整から総務大臣の審査を経て、5月から調査を実施して、12月ごろに結果報告する運びになります。
今回調査では、訪問系介護サービスで高齢者施設への訪問状況や移動手段や時間を把握するもの、介護ロボットやICT等の介護テクノロジーの導入状況を把握するものが追加されることから、これらの介護現場における業務の効率化をより注視していくものになります。
詳しい情報については、厚生労働省「介護事業経営概況調査」をご覧ください。
■出典(参考URLなど)
厚生労働省「第244回社会保障審議会 介護給付費分科会」
厚生労働省「第40回社会保障審議会 介護給付費分科会 介護事業経営調査委員会」
厚生労働省「介護事業経営概況調査」
厚生労働省「介護事業経営実態調査」